やみくもに大排気量エンジンを積んでいるようにも見えないでもない、アウディの他の「S」や「RS」モデルと違い、このTTの「S」は2リッター・エンジンを積んでいるところが、好感が持てます。
(というか、TTの車体にはさすがに4.2リッターはデカ過ぎるのでしょうね(^^; )
ちなみにTTSは、直4の2リッターですが、スペックは、最高出力272ps、最大トルク35.7kgm、0-100km/h加速は5.2秒と、かなり強烈です。
試乗車は、ボディカラーがアイビスホワイトでした。
TTS専用色としては、イモライエロー、ソーラーオレンジ、スプリントブルーパールエフェクトが用意されています。
イモライエローは見たことがないので、見てみたいですね。
エクステリア・デザインの「パっと見」は、ノーマルのTTクーペとほとんど同じように見えますが、グリルデザインや、エアロ系は、TTS専用デザインとなっています。
4本出しマフラーも迫力ありますね。
ということで、試乗車のコクピットに座りました。
内装も、基本的には通常のTTクーペと大きくは変わらない印象です。
このTTSは、日本には「左ハンドル」のみ導入されている、とのことです。何か意図があるのでしょうか。
トランスミッションは6速Sトロニックのみ。
毎度のことですが、これでMTがあればいいんですがね。
そして、エンジンを始動してみましたが、さすがに2リッターということで、「S」モデルから想像するよりは、かなり静かな「お目覚め」です(^^;
そしてゆっくりと走り始めましたが、低速では、野太いサウンドすら聞こえず、本当に静かなクルマであり、目隠しして乗れば、これが「S」モデルだとは気づかないと思います。
その後、アクセルを強めに踏んでみると、さすがに、「速い」と感じますが、なんというか、以前試乗したノーマルのTT 2.0T(FF)に比べると、運転の感覚がそれほど大きく変わらない印象でした。
2リッターとはいえ、「S」モデルですから、私の想像では、同じように、直4・2リッターを積んだ特別モデルである、シビック・タイプRのような官能性を期待していたのですが、このTTSは、そういう官能性には程遠く、静かで快適なクルマでした。
私がスポーツカーに望むことは、以前のブログでは、いろいろ偉そうなこと書いてますが(^^;、一言で言えば「全ての面で動きがナチュラル」とでも言いましょうか、例えば、ハンドルをこれくらい切れば、これくらい曲がるだろう、とか、アクセルをこれくらい踏み込めば、エンジンサウンドはこれくらい聞こえて来るだろうとか、そういう、「自分の期待(予想)したとおりに動くクルマ」とうイメージです。
ということは、当然、クルマが「速く走る」ときには、エンジンや排気音は、ある程度、官能的でなくてはいけません。
また、乗り心地も、快適過ぎては、自分の考えるスポーツカーとは違います。
そういう意味では、このTTSは、自分の考えるスポーツカーという定義からは、ある意味、対極にあると言っても言い過ぎではないクルマでした。
速いけど、とにかく快適。官能性という言葉は似合いません。
運転していて楽しい、というよりは、「速いのに、乗り心地がいいクルマだなぁ」という印象の方が明らかに強いです。
今回、TTSに試乗して、アウディというメーカーが求める方向性がどういうものかを、改めて、実感しました。
圧倒的な技術力と、圧倒的にクールなデザインセンスを武器に、あくまでも「運転する楽しさ」よりも「速さと快適さ」に重きを置いている、と。
前述のとおり、このTTSは、日本には「左ハンドル」のみが導入されていますが、今回試乗してみて、その理由は、自分なりに次のように解釈しています。
つまり、従来のTTクーペ(2.0T)でも、十分速いクルマであり、それがTT「S」になったからと言って、走りのテイスト全体に、それほど劇的な差を感じられないため、敢えて、TTSを左ハンドル専用とすることで、ノーマルのTTと差を設け、TTSの「特別感」を演出したのではないか、いや、意地悪な言い方をすれば、そうすることで「特別感」を演出せざるを得なかったのではないか、という気がしています。
ノーマルのTT(2.0T FF)が、\4,390,000。TTSが、\6,750,000。
そこに、230万円以上の差を見いだすのは、正直、個人的には難しいと思いました。
いずれにしても、私の求める「スポーツカー」のテイストには、程遠かったTTSですが、工業製品としての出来映えは、例えば、一応、同じカテゴリに位置すると思われる、私のブレラなどと比べた場合、比較にならないほど速く、ハイテク技術も満載であり、質感も高く、ほとんどの面でブレラを凌駕していると言っていいクルマだと思います。
やはり、「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」を謳うだけあって、そういう点では素晴らしいクルマだと思います。
ただ、負け惜しみではないですが(^^;、私が最も重視する、「運転する楽しさ」に関しては、ブレラ(2.2リッターモデル)のほうが、何倍も勝っていると感じました。
それにしても、今回TTSという、TTの特別モデルに試乗してみて感じるのは、一般的にスポーツカー(もしくはスポーティカー)と言われるクルマであっても、各社のクルマ作りに求める方向性というものが、こうも違うのかと、ということです。
もちろん、それによって、ユーザーにとっても選択肢の幅が出てくるので、これはとても良いことだと思います。
ところで、今回試乗したTTSですが、カメラのトラブルにより、残っていた写真は、TTSに関しては、このシフトノブ1枚のみでした(T_T)
追伸:今回お邪魔したアウディ・ディーラーに、なぜかオロチが展示してありました☆
今の自分にはスペック、速さよりも「運転する楽しさ」が一番重要です。
でもSは速いんでしょうね(笑)
TTSは、大排気量ではなく「2リッター」なところに好感を持っていたのですが、残念ながら、期待が大き過ぎたようです。。。
もちろん、速さは、凄いです、我々のイタ車よりも全然(^^;